<< 11/24 | main | ヨガの眠り鑑賞法 >>

シリアルキラースターシステム

悪の教典を見た。かなり壊れた道徳性で、映画として楽しい。エヴァQ(1本の映画として1800円払って良かったと思わせなかったらやっぱりダメだと思うんです。)よりも楽しめた。エンターテイメントしてる。
何がいいって伊藤英明が良くて、伊藤英明演じるサイコキラー蓮実聖司は、久しぶりに邦画に現れた魅力ある正統派なシリアルキラースターだったのが嬉しかった。
ちょこちょこホラーを見てきたけど、それでも驚くほど人が死にまくるので、そういうのが苦手な人はやめた方が良い。でも逆にあまりの投げやりな殺しまくりっぷりに最初は目を背けても、だんだんハイになってきて新しい自分を見つけられるかもしれない。あまり陰湿さは無い。

今日はダラダラ書くぞ。
 
映画の世界で、サイコパスの連続殺人鬼シリアルキラーの役というのは隠れた当たり役だったりする。
犯罪者の役はそれまでのさわやかなイメージを投げ打って、脱皮できるチャンスでもある。
もちろんそのまま埋没していくリスクもあるけれど、それでも数多くのシリアルキラースターが輩出されてきた。

現実世界でも連続殺人鬼には時折、奇妙なスター性やカリスマ性がくっついて回る。
"シリアルキラー"という言葉自体を生んだシリアルキラー界のスーパープリンス、テッドバンディ(30人以上殺害)は獄中で何百通というファンレターをもらってカリスマ扱いだった。
あの、リンゼイさん殺害事件の市橋被告にもファンがついていた、という話も聞いたことがある。

話を戻して、映画の世界では、レザーフェイスやジェイソン、フレディもシリアルキラーだが、あいつらはどっちかというと化物や亡霊サイドに片足突っ込んでるのでいまいちシリアルキラーって感じがしない(悪魔のいけにえは一番好きで一番気の滅入るホラー映画だけど)。

そんな中で映画界のシリアルキラーの真打は、『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『レッドドラゴン』のハンニバル・レクター。
非常に知能が高く、そのうえ身体能力も高い紳士。その恵まれたステータスが、消し去れないカニバル(人食い)への異常な執着を際立たせて、レクターの変態性を高めている。
ハンニバルという名前自体が人肉食の噂のある武将の名前から取られている。
レクターの異名 『ハンニバル・ザ・カニバル』は、『人食い・ザ・人食い』ってことだ。
映画第一作の無欠の完成度と、アンソニー・ホプキンスの最高の演技があいまって、今世紀最高峰のシリアルキラースターはお前だ!きみにきめた!

他にもブラッドピット主演の『セブン』に登場するジョン・ドゥも印象的なシリアルキラーだったなー。
キリスト教の7つの大罪をテーマにした殺人を次々慣行していくジョン・ドゥだが、まったく無個性、顔も覚えていない、というかほとんど出てこない。そこが逆に彼のすさまじさを印象付けている。
「ジョン・ドゥ」というのは「名無しの権兵衛」という意味合いで、身元不明の死体に付けられる名前だ。
つまり実体が無い。
この映画が凡百のシリアルキラー映画に埋もれないのは、ジョン・ドゥの名前のとおり最終的にその罪までが実体を失い人類全体に科せられるからだ。
ジョン・ドゥは、7つの大罪をモチーフに殺人を犯すが、自分ではそれを完結させない。
つづきは映画で。

大ヒットして、意味不明なほどに続編が出まくった『ソウ』シリーズの、ジグソウもシリアルキラースターの椅子にふさわしい大物だ。
ライアーゲームで激しくパクられてたビリー人形も有名だし、とてつもなく手間のかかった殺人ゲームにはジグソウの業の深さを垣間見させる。
そんな凶悪犯とはいえ、ジグソウにはどこかしら清廉としてヒロイックな魅力があり、そこがレクターともつながる部分がある。
演じたトビン・ベルには思わぬ当たり役だったと思う。
ところでジグソウには、後々に後継者と呼ばれる人たちが複数登場するのだが、こいつらがあんまりにボンクラでどうしようもない。
映画自体もすごい勢いでボンクラ度を増していって、かなり後半まで見たはずだがほとんど覚えてない。

最近の映画だとコーエン兄弟の『ノーカントリー』に登場した連続殺人鬼アントン・シガーはすばらしかった。
とにかく見た目がすごい。個性的な見た目のバビエル・バルデムが謎の黒髪19分けで怪しすぎる。
そして凶器がすごい。銃なんて生半可なものは使いません!なんとメインウェポンは酸素ボンベ!家畜を屠殺するための空気銃でスコーン!と相手の脳天を貫通する。警察もどうやって殺したのか首をかしげるぶっ飛びウェポンここに登場。
部屋の鍵もこの空気銃で吹き飛ばして侵入してくる。
そして、とにかく躊躇が無い。息を吸うように殺し、息を吐くように殺す。
にもかかわらず、シガーの中には確固たるルールがあって、それがヤツの異様さを加速させている。時として表か裏かのコイントスで、殺すか殺さないかを決める。このルールは絶対だし、交わした約束も絶対だ。利益が無くても殺すと決まった相手は殺す。
実質、この映画の主役はシガーでもあるし、ラストシーンのシガーはまさに不死身のシリアルキラースターだった。

もう一本、これは非常に惜し〜いシリアルキラーで、フランスの『ハイテンション』というスプラッター系のホラーに登場する殺人鬼だ。これを演じるのは『カルネ』の超個性派俳優フィリップ・ナオン。この人は名優。
突然、何の理由もなく田舎の一軒家に吹き荒れる暴力の嵐、汚く醜く凶悪な殺人鬼をパーフェクトに演じるフィリップ・ナオン。
この殺人鬼の登場シーンはかなり強烈で、こいつからの逃亡劇はむちゃくちゃ手に汗握る。屈指の名シリアルキラーだと思いかけた。
にもかかわらず!にもかかわらず!に も か か わ ら ず!
最後の最後で、どうしても許せない展開があるんだよなー。これはやっぱダメだと思うよ。チャレンジ精神は買うけどさー。シリアルキラースターになりそこねた男と言える。フィリップナオン、素顔はすごく良い人らしい。

日本の映画に登場したシリアルキラーはあんま思い出せないけど、園子温が実話を元にした『冷たい熱帯魚』の村田幸雄がとんでもない。
でんでんの熱演がすさまじすぎて、最初の殺害シーンは本当に怖くなった。
この手の金を目的とした殺人者というのは、そこまでシリアルキラースター界では評価が高くない気がする。
もっとどうしようもない動機、ある種の宿命のようなものに突き動かされているような犯人像が好まれる。
だけど、こいつはちょっと話が違って、あまりにインパクトがあった。
もはや金が目的を通り越して、完璧犯罪をやり遂げ神に近づくことにシフトチェンジしているような気迫がある。
「ボデーを透明にしちまえば、バレねぇよ〜」という怖すぎるセリフを吐くでんでんは、実際の犯人の写真にかなり似ている。
近年まれに見る日本産シリアルキラースターだ。

もう一人、大好きな金田一耕助シリーズからシリアルキラーを一人くらいは紹介したい。
美しい殺人者、には事欠かない金田一シリーズだが、強烈なインパクトのシリアルキラーというと『八つ墓村』の多治見要蔵を差し置いて他にいない。
幾度となく映像化された『八つ墓村』だが、ここであげているのは1977年の映画版。
金田一耕助を演じたのは、男はつらいよの渥美清。人情味あふれる金田一。意外と原作での金田一の描写は、美青年の石坂浩二より渥美清の方が近かったりする。
そして多治見要蔵を演じたのは、山崎勉。この人は20代の出生作が、日本の犯罪映画の金字塔『天国と地獄』の犯人役だから、日本を代表するクライムアクターとも言える。
このシーン自体は回想シーンで、かつて八つ墓村におきた惨劇、という感じで登場する。
劇中のこの事件は、実際に起きた津山事件をモデルにしていて、舞台も同じ岡山県。
桜吹雪の舞う中、猟銃と日本刀で武装した鬼の形相の山崎勉が村人を全滅させようとこちらにむかって走ってくるシーンはトラウマ確実。
マジで幼少期に見なくて良かった、と思うほどの迫力があって、日本の映画界に君臨するシリアルキラースターに認定したい。

あと、実際に起きた事件のそのまんまな映画化には、それはもちろん印象的な殺人者が登場する。
ジョン・ゲイシー、エド・ゲイン、ジェフリー・ダーマー、アンドレチカチーロ、ゾディアック・・・
枚挙に暇がないくらい映画化しているけど、これは外した。
そりゃ本物をそのままモデルにしてるから、リアリティが違うしな。

なぜこんなことを書いているのかというと、悪の教典を見てある部分が刺激されたからだ。
というのも中高生の頃は、よくそういう本を買ってビビってみたり、調べてビビってみたり、映画を見てビビってみたりしていたなぁと思い出した。
とんでもないものを知って、「世界って広いな」とか「人間ってすごいな」というのに近い感覚だったと思う。
それはシリアルキラーグルーピーが彼らにスター性を感じるのにも近い感覚なんだろう。
「自分にできないことをやってのける。それは、どこか自分の中の負の感覚を、ひいては人類の根源的な何かを代弁してくれてるのでは」という考えなんじゃないかな(今は、まったく見当ハズレだと思うけど)。
そして僕は、あのシリアルキラー系の本を買い集めたり調べたりしてしまう一連の行為は、もはや大部分の人が経験している思春期の通過儀礼なんじゃないのか、とすら思うんです。
あなたもやってませんでしたか?
または、現在進行形で。
忘れてたのに、思い出させたらごめんな。
そんなこと調べたことも考えたこともない、という健全な人は逆にアンビリーバブルですよ。
それで、これは中二病の案件だろうと思って中二病チェックリストというのを見たのに、意外にも載ってないなー。
でもあの一連の行為を行ってたあなたも、あなたの中のどこかに生きている。
そんなことを思い出しました。

そんなわけで突然、映画に登場するシリアルキラースターについて話をした。

その手の本から学んで覚えてることなんてほとんど無いけど、一つあるのは、生まれながらの殺人者はいない、ということ。
いわゆる利益もなく人を殺める快楽殺人者サイコキラーの9割以上が、幼少期に複雑な家庭環境で生きてきた経歴を持つ。
特別に異常な殺人者(つまり映画になるほどの連中)は、ほぼ例外なく常軌を逸した家庭環境で育っている。
シリアルキラーは、人が作るということ。あとは全部わすれた。


この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< March 2017 >>
count
ブログパーツUL5
twitter
selected entries
categories
archives
recent trackback
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM