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怪奇の町の上、正義の星の下

明日、科楽特奏隊のメジャー2ndアルバム『怪奇と正義』がついに店に並ぶ。

 

1作目『ウルトラマン・ザ・ロックス』ですら出せたことが奇跡のようなもんなのに、まさか2作目、しかもウルトラマンの主題歌「以外」の楽曲のカバーアルバムという変化球…いや、魔球を繰り出せるとは感慨もひとしおである。これも一作目を手にとってくれたみんなのおかげである。

 

しかし、どう考えても売れる気がしない。

「そんな風に言わないでください!」「ふざけるな!」という叱咤の声が聞こえてきそうだが、ちょっと、ちょっと待ってほしい。リード曲が『恐怖の町』、2曲目は『戦え!アイゼンボーグ』である。世間的な意味で売れる要素は、部屋中見渡しても見当たらない。

もちろん最高に最高だが、最高の異常事態である。この時代にこのアルバム、作る方も作る方なら、企画を通した方も企画を通した方なのだが、しかし、この作品に関わった多くの人たちの黒歴史になっては僕も目覚めが悪い。夜道も危ないかもしれない。

しかも何より、良いのだ、このアルバム。間違いなくクールなのだ。そこで、このアルバムのセルフライナーノーツを書き残しておきたい。そしてあなたには、「聞く方も聞く方」になって一緒にこの歴史的突然変異の共犯者になってほしいと思う。生粋の特撮愛を持つ皆さんにはもちろん、ここに入ってる楽曲を知らない君にも、ちょっとしたマニアックさをむしろスパイスにできる強靭な舌をもって、この『怪奇と正義』を味わってほしい(まるなげ)。

 

 

 

そもそも、このアルバムこそが、科楽特奏隊のやりたかったことそのものの一つであり、『ウルトラマン・ザ・ロックス』だけでも、『怪奇と正義』だけでも完結しない世界なのだ。

二つは表裏一体の兄弟で、まさに「怪奇」と「正義」、言うなればウルトラマンとザラブ星人。二つ揃って存在して初めて僕たちが円谷プロダクションの協力を得て作品を発表している意味がある。

僕たちは別に有名作品だけが好きなわけでなく、マニアックさだけを愛しているわけでもない。

基準はただ自分たちが面白いと思うか、そして良い曲だと思うかどうかだけ。ここに並んだ11曲は、そんな僕たちが演奏してみたいと心から思った名曲たちだ。

 

 

1、恐怖の町 (新録バージョン)

『怪奇大作戦』より

バンドマジックのないバンド音楽なんていらない。そういう意味で科楽特奏隊はやはり突然変異ではあるがバンドで、初期から演奏しつづけてきたこの曲には科楽特奏隊のマジックが詰まっている。

原曲の2倍速くらいにして、ひたすら全力のバンドサウンドでかき鳴らしているだけのこの曲が最高にかっこいいのは、楽曲の力であり、マジックの成せる技だ。

そもそもこの曲には原曲の他にリスペクトした曲があり、それは結成時からのイメージ元でもある。

約20年前にリリースされた特撮バンドカバーの先人『特撮狂(特撮クルー)』に収録されたMAD3による『恐怖の町』がそれである。こちらはインストだが、そのエネルギー量は凄まじく、僕自身心から好きな特撮カバーの1曲だ。これくらいのブっ壊しかたで、クールさで、特撮音楽をバンドでやりたい、と思えた曲だ。

 

1968年の放送から50年を迎える『怪奇大作戦』は、僕自身が卒業しかけていた「特撮ドラマ」にザバーンとジャンピング出戻りするきっかけとなった作品だ。

ファミリー劇場での全話一挙放送で見たときの衝撃は忘れない。ヒーローも怪獣も出てこないこの作品の、ときに本格派、ときにカルトな魅力。怪獣の不在を埋めるレベルの岸田森の存在感、ATG映画を見ているような気持ちにさせてくれる実相寺監督の演出、ときおりある「むちゃくちゃすぎるわ!」というチープな脚本、、、魅力を語り出せばきりがないのでこの辺にしておくけど、とにかくリスペクトが詰まったこの曲を50周年というタイミングでアルバムの冒頭に持ってこれたのは嬉しい限り。

 

 

2、戦え!アイゼンボーグ

『恐竜大戦争アイゼンボーグ』より

ここ最近の大出世シリーズ、その前が『レッドマン』なら、最近は『アイゼンボーグ』だろう。特撮とアニメの融合という、日本でもかなりマニアックな部類に入るこの作品が、はるか海を渡った中東で根強い人気を誇り、とあるサウジアラビアの熱烈なファンの呼びかけで40周年の節目に新作が作られた。まさに奇跡の復活を遂げた作品だ。

今回の『アイゼンボーグ』収録に、そのサウジアラビアの富豪ジャッラーハもSNSで喜びの連絡をくれた。「アイゼンボーグ」でエゴサーチしているその執念にも驚かされたが、規模は違えどジャッラーハがやっていることと、僕らがやっていること、根底では気持ちは近いと思っているので、とても嬉しかった。

そんなわけで今最高にホットな曲を、アークティックモンキーズ風の骨の太いサウンドでゴリゴリとやってみた。恐竜が押し寄せているイメージだ。やはり好きなのは恐竜の名前を連呼するパートだ。1番で叫ばれる名前が「ぜんぶ草食恐竜」と知ったときは笑ってしまった。この曲のベースは特撮バンドマン界の兄貴、出口博之兄さんに弾いてもらった。言うなればゾフィー的な助っ人だ。めちゃくちゃ出口節なので、必聴。

 

 

3、夢のヒーロー (リミックスバージョン)

『電光超人グリッドマン』より

僕らの子供の頃のリアルタイム円谷作品は少なかった。そんな円谷冬の時代に颯爽と現れたのがグリッドマンだ。

コンピューター世界に現れる怪獣を撃退するヒーロー、というインターネットの普及やコンピューターウイルスの問題を先取りしまくった作品で、マジで早すぎた。リアルタイム放送でどハマりした最初の円谷ヒーローかもしれない。この作品に出てくる手作りパソコン「ジャンク」に憧れて、道端に落ちている電子部品を全て拾い集めるという奇癖が身についた。今年は35周年で、時代が追いついて新作アニメ化が決定している。

オープニング楽曲である「夢のヒーロー」も、子供の頃から大好きな歌で、特に熱い歌詞が最高だ。科楽特奏隊では、よりシティでポップな感じを目指してカバーした。遼さんによるシンセが、コンピューターワールド感を醸し出しており、歌に乗ってくるエミソンヌによるソウルフルなコーラスもかっこいい。僕のギターソロもすごい良いと思うが、あまり聴こえない。よく聴いてみてほしい。

 

 

4、レッドマン

『レッドマン』より

ここまで書いてみて、長文になりすぎてて、このままだと発売までに書き終わらない気がしてきたのでちょっと加速しようと思う。

近代1のバズりヒーロー・レッドマン。円谷作品をみんなで見て突っ込んで盛り上がる、という感覚を広く共有したエポックメイキングなヒーローだ。ちなみにこういう楽しみ方を「キャンプ」という。アメリカだと、キャンプな映画をみんなで見て笑って楽しむパーティー文化が昔から広く根付いているらしい、という話を中学生くらいのときに知って、憧れが止まらなかった

レッドマンは、わずか5分ほどの番組内で、突如現れ、普通に歩いてるだけの怪獣に襲いかかり刺殺する。そのシュールな姿から「赤い通り魔」の異名で大人気となった。僕らもその人気にあやかろうと、オマージュ映像を作ったのだが、まったくバズらなかった。いつの日か本家レッドマンのように日の目を見ることに期待したい。

 

 

5、アンドロメロス

『アンドロメロス』より

さて、アンドロメロスである。今作の最大の問題作とも言われている。アンドロメロスといえば、鎧に身をまとった4人の戦士たちが活躍する5分ほどの特撮番組で、学年誌なんかの特撮グラビアがTV番組になったような独特のユルい味わいがある。第1話の冒頭から、4人のうちの1人・アンドロウルフが負傷していてお留守番という展開が衝撃だ。

この水木一郎さんが歌うアンドロメロスの主題歌、明朗としたポップな楽曲なのだがカバーがめちゃくちゃ難しく、一番難航した。一度まとまりかけたアイデアを全部捨てて、ある方向性に振り切ってアレンジした。それが「ジミヘンがアンドロメロスをカバーしたら」である。

伝説のロックギタリストであるジミ・ヘンドリックスがアンドロメロスを演奏したら…そんなイメージだけを胸に、スタジオでマーシャルをフルボリュームの爆音で鳴らして録ったのがこのアレンジだ。楽器は、ギターとドラムに、出口さんのブイブイと暴れるベースのみのスリーピースで、気分はジミ・ヘンドリックス&エクスペリエンスである。これは世界初のアプローチだろう(アンドロメロスをカバーしている人が他にどれくらいいるかわからないが)。結果的に入魂のアンドロメロスになった。

 

 

ぜんぜん短くならねぇ!ここからもっと加速する。

 

 

6、快獣ブースカ

『快獣ブースカ』より

全国のエミソンヌファンの皆様、お待たせしました。今回もエミソンヌが歌う癒しの時間をご用意しました。

楽曲は円谷の誇るマスコットキャラ・快獣ブースカ!

とにかくエミソンヌの歌の可愛さが際立つように、ウクレレなんかを弾いてシンプルで牧歌的なアレンジにしてみた。可愛くってなんだか泣ける、最高の折り返し地点になっている。

 

 

7、ミラーマンの歌

『ミラーマン』より

ミラーマンの歌は本当に独特で、なんとも不思議な魅力がある。ロックにもアレンジできそうだったが、朝焼けの中に溶けていくようなサイケデリックなアレンジにしてみた。60年代のソフトサイケバンドや、Flaming Lipsのようなイメージだ。一度こういう方向性で特撮音楽をアレンジしてみたかった。

ところで、かつて中原昌也さんの暴力温泉芸者が「ミラーマン」のカバー(?)をアルバムに入れていた。それが、誰かわからない素人がカラオケボックスで歌うミラーマンを適当にマッシュアップした感じの音質の悪い気の狂ったトラックだった。あれはマジでなんだったのか、一度聞いてみたい。

 

 

8、ファイヤーマン(新録バージョン)

『ファイヤーマン』より

子門真人はロックである。

これは真理である。

白人的なロック、黒人的なソウル、そして日本人的な叙情、これらが渾然一体となった唯一無二のグルーヴを持つシンガー。

この稀代の歌い手が、数多くの子供番組の主題歌を歌い残してくれたことは、この国最大のロックの幸運の一つだろう。

彼が残してくれたロック的遺伝子は、日本人のDNAの奥底に眠っている。

 

 

9、ULTRA7

『ウルトラセブン』より

主題歌の方でなく、劇中にかかる英語の歌である。ポインターの走行シーンや、ウルトラホークの発進シーンで流れる、ウルトラシリーズ史上もっとも洒落た曲だと思う。

科楽特奏隊バージョンでは、福田"キング"裕彦さんのピアノをフィーチャーし、「発進してる感」満載の疾走感あるアレンジを目指した。車の運転中などに聴いていただきたい。事故は起こさないでいただきたい。

もう一つ、この曲の間奏でナレーションを入れているのは、ウルトラマンシリーズで監督を務める田口清隆監督である。超豪華である。これ、原曲のナレーションを満田かずほ監督が担当していることへのリスペクトを込めて田口監督にお願いしたのだ。

 

 

10、TACの歌

『ウルトラマンA』より

僕が愛してやまないウルトラマンAの、防衛チーム・TACのテーマ曲だ。この曲は最高で、劇中でTACの隊員たちがこの歌を歌う、というメタなシーンがあるのだ。つまり、ウルトラマンAの世界にもこの歌は存在するようだ。なのにこの曲、基地の所在地や、兵器の存在隊員の個人名まで歌詞で暴露している。この危機意識のなさが第2期ウルトラの魅力だ。

特に好きなのは2番で、ここに「ドルフィン2号」というマシーンが出てくるのだが、劇中で一度も出てこない。じゃあ、1号は出てくるのかというと1号も出てこない。そもそも富士五湖の基地に格納された潜水艦なのだが、富士五湖は海につながっていないので海に出れない。おそらく、劇中に出てこなかったのは、富士五湖の湖底をずっとさまよっていたからだろう。

この曲のアレンジ元は90年代のバンド・NIRVANAである。TACの歌をグランジ調に、という遼さんの発想にも驚かされるが、個人的にもNIRVANAは心から愛するバンドでたくさんのNIRVANAリフを曲中に散りばめさせてもらった。好きな人は探してみてください。

 

 

11、マイティジャックの歌

『マイティジャック』より

 

アルバムの最後を飾るのは、「怪奇大作戦」と同じく放送50年を迎える特撮ドラマ「マイティジャック」である。

マイティジャックは、巨大ヒーローが登場せず派手さはないが、とにかく一つ一つのアイテムや設定がセンス良い。冨田勲さんが作曲したこの曲も、ものすごく洒落ていてかっこいい。子供向け番組でありながら、楽曲の半分以上がインストというのもセンスにあふれている。冨田さんの特撮番組の主題歌といえば「キャプテンウルトラ」もすごい曲だ。

遼さんのシンセが映えるニューウェーブ調となっている。個人的にこだわってグレッチで弾いたギターソロの音色が良い感じである。

最後を飾るにふさわしい大作になっていると思うので、ぜひ一緒に合唱しよう。

 

 

 

というわけで、怪奇の町の上、正義の星の下、僕のオタク人生の記念碑にして、音楽人生的にも趣味嗜好をつめこんだ『怪奇と正義』が世に出る。

科楽特奏隊というバンドが生まれたのは、きっとこんな作品を残していくためだったんじゃないかと思う。

 


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