実相寺昭雄追悼オールナイト

この間、ウルトラQの試写会に行ったのだが、そういえばウルトラ系の上映会に行ったのはあれが最初じゃなかった。
昔に、実相寺昭雄追悼オールナイトを見に行ったのを思いだした。

実相寺昭雄というのは、映画監督だ。
独特なATG映画(意味がわからないまま、なんとなくわかった顔して見ていた高校時代に幸あれ)とか、あとウルトラマン、ウルトラセブン、怪奇大作戦などで異色の作品を撮っていて、特撮ファンにはいうなれば神のようにあがめられている人だ。
この人の監督作品は、異色っていうか本当に変だ。
変身グッズと間違ってスプーンをかざしてしまったり、怪獣の葬式があったり、宇宙人と青年が玄関先に腰掛けて語らったり、ウルトラセブンと敵の宇宙人がちゃぶ台を挟んであぐらをかいて討論したり、女性が突然仏像に変身したりする。
あげく4畳半のアパートの屋根が開いて宇宙船が飛び出てくる始末だ。
しかも特撮史に残る名作、問題作もしっかり監督してるあたり恐るべき天才の所業である。
やっちゃいけないことをやってしまう人だったのだ。


監督は6年前の2006年に亡くなってしまったのだが、その時に池袋で追悼オールナイト上映があった。
実相寺に心酔している僕は、もちろん見に行った。

ウルトラマン関係のインタビューを読むと、「実相寺監督はすごかった」と彼を慕うスタッフの多さに驚かされる。
独特の演出手法や人柄が、多くの人に影響を与えてきた証拠だろう。
こういう影響力のある人っていうのは、死後にも何やら引き寄せてしまう力があるようだ。

僕は、この追悼オールナイトでまざまざと実相寺パワーを感じた。


まずは、夜中に池袋の映画館にたどり着いた。
会場に入ってあたりを見渡すと、ほとんどの客は中年男性で、一種特有な雰囲気が漂っている。
「若者がほとんどいないな〜。」と思いながら、番号の席に座りパッと横を見ると、
隣の隣の席が中学の頃の同級生だった

卒業してから一度も会っていないヤツだ。
まさかの再会が『実相寺昭雄追悼オールナイト』である。
しかも、別に仲良くなかったヤツだ
きまずい。

大体にして、特撮とかそんなものに興味があるタイプには思えないヤツだった。
だって、健全なサッカー部だったよな、お前!?
追悼オールナイト上映に来るっていうのは、さすがに相当なファンだろう。
しかも変な色の髪になっている。
この数年間で何があったんだ。

しかし向こうは、こちらに気づいてない様子。
僕はそっちを見ないようにして、そのまま彼には触れずに、夜を明けさせた。

しかし、いきなり驚かされる。
数年ぶりに再会した、たいして仲良くない中学の同級生と、並んで『怪奇大作戦』を見るこのシュールな状況。
わかってもらえるだろうか。

気を取り直してオールナイトの始まりは、トークショーだ。
川崎実監督が、マイクを握り自慢のトークで場を暖めている。

しかし、しばらくすると何やら前の席の方が騒がしい。
ざわざわしている。
「誰か倒れたのかな?」と思ってそちらをうかがっていると、若い女性が手を挙げて言った。

「痴漢です!!」

えーーーっ!?痴漢ーーーー!?
どよめく会場。
すっとんできた係員たちが一人のおっさんを捕まえて、連行していく。
どうやらマジで痴漢被害があった様子だ。

おっさんよ、なぜよりにもよって『実相寺昭雄追悼オールナイト』の客席で痴漢を!?

しかも、まだ会場が暗くなってすらいないトークショーの時間。
そりゃ捕まるって。わけがわからない。
なぜ、こんなわけのわからんシチュエーションを選んで痴漢行為を働いたのか。

もしかして冤罪?っていう気もしないことはない。
しかし、これはやはり、実相寺監督のシュールなオーラがおっさんの隠れたスットコドッコイな性欲に火をつけてしまったと考えるのが妥当だろう。
実相寺監督、実は大の風俗好きで、ものすごい金をつぎこんでいたらしい。
ピンク映画の監修などもてがけているし、おっさんは敏感にその辺のオーラを感知してしまったのかもしれないのだ。

こうして、仲の良くない中学の頃の友人と並びながら、深夜の映画館で痴漢が連行されていくのを眺めている、という人生で二度とないシュールなシチュエーションを作り上げたのも、きっと実相寺監督の情念が為したことなのではないだろうか。
これぞ、死してもなお続く、実相寺演出なのだ。

ちなみにこのオールナイト、30分作品とはいえ、一挙に11本も連発するという内容もなかなかヘビーな物だった。



ウルトラQプレミアム試写会に行って来た。

ウルトラQっていうのは、ウルトラマンの前に放映していた日本で最初の特撮テレビ番組だ。
初めて日本のお茶の間に、毎週怪獣やら宇宙人やらが登場した記念すべき30分だった。

で、そのウルトラQが今年で45周年ということで、それを記念してカラー化される。
そうなのだ。
白黒番組がカラーになってしまう世の中なのだ。
いやー、びっくり。

今年はそれもあってウルトラQ関連が大変にぎわっていて、イベントがあったり本もいろいろ出たりする。
特撮仲間の太平洋大内くんと見に行った開田裕二さんの『総天然色ウルトラQ展』もその一つだ。
この展覧会自体もすごく良くて、作品では表現されていなかった瞬間を、特撮以上のイマジネーションで描いたLDジャケットが良い。
とくに「ゴルゴス」と「バルンガ」が良いです。

最近のDVDジャケットというと、劇中の画像だったり、写真だったりが多いけど、
この頃のVHSやらLDのジャケットというのは、イラストレーターによる書き下ろしのイラストが多い。
それが作品世界のさらなる広がりを想像させてくれて、とても好きなんだけどなぁ。

で、いろいろウルトラQグッズもあったので北斗の拳のジードばりに「うひょひょ〜い、根こそぎいただくぜ!」とは叫ばなかったものの、二人で買いあさった。
すると購入特典で抽選があって、何気なくひいたら当選。
それが『ウルトラQプレミアム試写会』の招待券だったわけだ。

前置きが長くなったけど、行ってきました。
周りを見渡すと、おそらく当時ウルトラQを見ていた世代の人たちが中心。
トークゲストは、ゆりちゃんでウルトラマンのフジ隊員でもある桜井浩子さんと、一平こと西条康彦さん。
特撮界の顔、「せんぱ〜い」こと佐原健二さんは体調不良で病欠だった。
うーん、そろそろご高齢なだけに心配だ。

子供の頃から見続けた二人を生で見れるのは、ただただ感動だった。
西条さんはずっと客席をウロウロしていて、すぐ側を通るたび「うお〜、一平ちゃんだ〜」と思っていた。
星川航空のユニフォームを着用して歩く姿は、45年前とホントに変わらない。

肝心の本編は、ペギラという有名傑作怪獣が登場する『東京氷河期』と、ゴシックホラー調の『クモ男爵』。
ばっちりカラー化されてる。
まずはカラー化が絶妙なので、ほめます。
ほめちぎります。
これをやった外人よ、よくやった!
鮮やかなんだけど、あくまで色あせたレトロ感がある落ち着いた色調が違和感なく昭和の風景を彩っている。
これみよがしに「カラーーーーーッ!」ってほど鮮やかだったら、ちょっとウルトラQの世界には合わないだろう。
郷愁と、見やすさが融合した、良い塩梅のレトロ・フューチャー・カラーだと思う。
あと映像、音もものすごい鮮明になっている。
実際、古い不明瞭な白黒映像というだけで敬遠する人もいると思うので、多くの人に見やすくなったのではないか。

そんでこうして見ると、なんてすばらしい作品なんだろう。
もうなりふりかまわず褒めるけど、そりゃあ45年間愛されるよ、って内容だった。
CGに見慣れた今の目で見ても、想像を超えた映像が映し出される。
クモ男爵の臨場感はすごかった。
なんか知らんが、登場人物はみんなイキイキしてるし、ゆりちゃんはキュートだ。

僕は物心ついたときの最初期の記憶に、ウルトラQの『マンモスフラワー』の映像がある。
センス・オブ・ワンダーを教えてくれたのは、『マンモスフラワー』だ。

45年の時を駆けて、今でも人の心を掴む作品を作った執念と努力。
それを受け継いでいく後世の人々の努力も含めて、とってもだいすきウルトラQ。




感動の余波で描いたペギラ。


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